中央教育審議会
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)
L 専門教育に関する各教科・科目
(ア)職業に関する各教科・科目
(@)改善の基本方針
○ これまで、幅広い分野で産業・社会を支える人材を輩出してきた専門高校は、今後も
経済社会の様々な情勢の変化に対応し、職業人として必要とされる力を身に付けた人材
を育成するとともに、地域や産業社会の発展に貢献するために、引き続き重要な役割を
果たすことが求められている。
○ このため、専門高校における職業に関する各教科・科目*1 については、その課題*2
や
改正教育基本法等で示された職業にかかわる規定等*3 を踏まえ、将来のスペシャリスト
の育成という観点から専門分野の基礎的・基本的な知識、技術及び技能を身に付けるた
めの教育とともに、社会に生き、社会的責任を担う職業人としての規範意識や倫理観等
を醸成し、豊かな人間性の涵養等にも配慮した教育を行うことが重要である。
○ また、産業構造の変化、科学技術の進歩等の情勢の変化に対応し、それぞれの専門分
野で真に必要とされる教育内容に精選するとともに、新たに求められる教育内容・方法
を取り入れることが重要である。
○ さらに、専門高校における職業教育の充実のためには、小学校・中学校段階における
キャリア教育や進路指導との接続、専門高校生に産業社会や大学等が求める能力・資質
との関連、社会や大学等の専門高校生への積極的評価、次代を担う人材の育成という観
点から、関係各界・各機関等との連携強化なども重要な視点である。このような基本的
考え方の下、各教科について科目の構成及び内容の改善を図る。
(A)改善の具体的事項
(教科横断的な事項)
○ 次の三つの視点を基本とし、各教科を通して以下の横断的な改善を図る。
○ 第一は、将来のスペシャリストの育成に必要な専門性の基礎・基本を一層重視し、専
門分野に関する基礎的・基本的な知識、技術及び技能の定着を図るとともに、ものづく
りなどの体験的学習を通して実践力を育成する。
さらに、資格取得や有用な各種検定、競技会への挑戦等、目標をもった意欲的な学習
を通して、知識、技術及び技能の定着、実践力の深化を図るとともに、課題を探究し解
決する力、自ら考え行動し、適応していく力、コミュニケーション能力、協調性、学ぶ
意欲、働く意欲、チャレンジ精神などの積極性・創造性等を育成する。
*1 専門高校における職業教育に関する教科は、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉で構成している。さらに、それぞれの教科に属する科目が定められており、例えば、農業については「農業科学基礎」、「環境科学基礎」など29の科目で構成している。これらは、学校教育法施行規則別表第3において定められている。
*2 課題としては、経済のグローバル化や国際競争の激化、規制緩和等に伴う産業構造の変化、技術革新・国際化・情報化等に伴う産業社会の高度化、就業形態の多様化などに見られる就業構造の変化等により、我が国の産業社会や企業の専門高校に対する期待や、専門高校の生徒に求める資質・能力は変化してきている。また、専門高校の生徒の意識の変化や進路の多様化が進んでいる中で、「大学全入時代」の到来等も相まって、これまで以上に明確な目的意識をもった進路選択が促進されるよう、適切な対応が求められている。
*3 具体的には、以下のとおり。
・教育基本法第二条(教育の目標):「職業との関連を重視すること」
・学校教育法第二十一条(義務教育の目標):「職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと」
・学校教育法第五十一条(高等学校の目標):高等学校教育で目指すべき人間像として「豊かな人間性」、「専門的な知識、技術及び技能の習得」、「社会の発展に寄与する態度」等
○ 第二は、将来の地域産業を担う人材の育成という観点から、地域産業や地域社会との
連携・交流を通じた実践的教育、外部人材を活用した授業等を充実させ、実践力、コミ
ュニケーション能力、社会への適応能力等の育成を図るとともに、地域産業や地域社会
への理解と貢献の意識を深めさせる。
○ 第三は、人間性豊かな職業人の育成という観点から、人と接し、自然やものとかかわ
り、命を守り育てるという職業教育の特長を生かし、職業人として必要な人間性を養う
とともに、生命・自然・ものを大切にする心、規範意識、倫理観等を育成する。
○ また、上記を踏まえた改善に当たり、産業構造の変化、技術の進捗等に柔軟に対応で
きる人材の育成のため、専門分野に関する基礎的・基本的な知識、技術等の定着を特に
重視するとともに、就業体験等、実社会や職業とのかかわりを通じて、高い職業意識・
職業観と規範意識、コミュニケーション能力等に根ざした実践力を高めることを一層重
視し、例えば、職業の現場における長期間の実習を取り入れるなどにより、教育活動を
充実すべきである。
○ 上記の他、生徒の意識の変化や進路の多様化*1 等に対応するため、弾力的な教育課程
を編成することに加えて、より実践的な職業教育や就業体験等を通じて、職業選択能力
や人生設計能力を身に付けさせる教育が可能となるよう配慮することも必要である。
(各教科・科目に関する事項)
○ 上記を踏まえた職業に関する専門教育に関する各教科・科目の改善については以下の
とおりである。
a)農業
○ 国際化や情報化が進む中、農林業における生産・流通・経営の多様化、技術の高度化
や精密化、安全な食料の安定的供給への要請や地球規模での環境保全の必要性の高まり、
動植物や地域資源を活用したヒューマンサービスの拡大等に対応し、新たな時代の持続
可能な農林業を支える人材等を育成する観点から、科目の新設を含めた再構成、内容の
見直しなど次のような改善を図る。
(ア) 教科の目標については、産業として多様化した農業への関心を高めるとともに、農業
や社会の発展は持続的で安定的になされなければならないという趣旨を明確にする。
(イ) 科目構成については、上記の改善の視点に立ち、現行の29科目を次の30科目とす
る。
農業と環境、課題研究、総合実習、農業情報処理、作物、野菜、果樹、草花、畜産、農業経営、農
業機械、食品製造、食品化学、微生物利用、植物バイオテクノロジー、動物バイオテクノロジー、
農業経済、食品流通、森林科学、森林経営、林産物利用、農業土木設計、農業土木施工、水循環、
造園計画、造園技術、環境緑化材料、測量、生物活用、グリーンライフ
(ウ) 以下のとおり、科目を再構成する。
・環境学習の重要性の増大に鑑み、農業生物の育成と環境の保全、創造についての学習
を一貫して学習する必要があるので、「農業科学基礎」と「環境科学基礎」を整理統
合して「農業と環境」とする。
・従前の「動物・微生物バイオテクノロジー」に関する動物と微生物の二つの分野は別
々の科目として学習する方が効果的であり、微生物分野に関しては既存の「微生物基
礎」との重複があるため、動物バイオテクノロジー分野は「動物バイオテクノロジー」
とし、微生物バイオテクノロジー分野は「微生物基礎」と統合し、「微生物利用」と
する。
・林産物の生産(木材は除く)・加工・利用に関して系統的に学ぶことから「林産加工」
の名称を変更し、「林産物利用」とする。
・地球環境における水の循環や生物とのかかわりを含め、水に関して一体的に学ばせる
ため、「農業土木設計」の水と土の性質と「農業土木施工」の農業水利を合わせて「水
循環」とする。
・「造園技術」に含まれている造園緑化材料の内容を基に、庭園、建物周辺などを含め
て広く環境緑化等に役立つ材料の開発、利用、維持及び管理のために必要な知識・技
術を体系的に学ばせるために「環境緑化材料」を整理分類し、「造園技術」と「環境
緑化材料」の2科目とする。